保険金不払い 業界に根深い顧客軽視の体質

 生命保険、損害保険各社は、いかに顧客を軽視してきたかを厳しく反省する必要がある。業務のあり方を一から見直さねばならない。

 生保38社が金融庁に報告した2001~05年度の保険金などの不払いは、25万件、284億円にのぼった。調査がすべて終わっているわけではなく、不払いの可能性がある契約が、さらに100万件以上も残っている。

 がんや脳卒中、心筋梗塞(こうそく)になると保険金が支払われる「3大疾病特約」や、入院前後の通院を対象にした「通院特約」などの不払いが目立つ。

 特に問題なのは、契約者から請求がないとの理由で払わなかったケースだ。

 自分の保険に特約が付いていることを忘れていた。入院給付金の請求手続きをすれば、特約分も請求したことになると思った。そんな人たちが、特約分の保険金支払いを受けていなかった。

 生保各社は、本来なら、そうした契約者に注意を喚起し、保険金の請求を促すべきだった。それをせずに、支払うべき保険金を払ってこなかったのは、顧客のことを考えていないからだろう。

 たしかに、保険契約の約款では、契約者から請求があった場合に保険金を支払うことになっている。それならば、請求できる保険金の案内を徹底したり、特約分も一括して請求できる手続きを用意したりして、請求漏れを少なくする努力をするのが、保険会社の義務だ。

 保険金不払い問題は、損保業界でも深刻だ。自動車保険の特約や、医療保険など「第3分野」商品での不払いが相次いで明らかになった。

 生保、損保ともに、商品を売ることに比べ、保険金支払いや契約管理の体制整備には手を抜いてきたのは明らかだ。

 高齢化が進み、生保では死亡保障より医療保障へのニーズが高まり、損保でも第3分野が急成長した。少子化で契約増が望めない自動車保険では、各社とも特約で付加価値をつける戦略に頼った。

 新商品が増え、特約が複雑化すれば、保険金の請求手続きや、査定も煩雑になる。保険会社は、契約者からの「請求待ち」にあぐらをかくことなく、新商品や特約に対応した顧客サービスをこそ、競うべきだった。損保では、医療保険の支払い基準の未整備や、査定担当者の知識不足も目立つ。

 保険金をきちんと支払うことが、保険業務の基本中の基本だ。各社は、商品内容から保険金の請求手続き、支払い体制までを徹底的に見直すべきだ。それができなければ、消費者の保険不信は深まるばかりだ。

読売新聞 - 2007/4/15