医療機関と税

 診療報酬の改定は,医療機関の収入の増減,ひいてはそのまま医療機関の経営問題に直結しており,すべての会員にとって重大な関心事だと思われる.昨春の診療報酬のマイナス三・一六%に象徴されるように,昨今の医療情勢を鑑みると,できるかぎりの経営努力をしたとしても,医療収入の増加を望むことは容易ではない.
 一方,支出,ことに医業における税への関心は,医療機関によってさまざまである.昨今,話題になっている社会保険診療に対する控除対象外消費税は,急性期大病院にとっては,その存続の根幹にかかわる大問題という認識である.私立医科大学の平均控除対象外消費税額が九億九百万円に達し,社会保険診療の二・五%に相当するとなれば,それも当然だと思われる.しかし,診療所にとっては,社会保険診療における控除対象外消費税の実額があまり大きくないこと,また,自由診療の売り上げが一千万円に満たなければ免税業者となるために,病院ほど関心が持たれていないように思われる.しかし,将来の消費税率のアップが予想されるなか,このままこの問題を放置しておくことは,もちろんできない.日医としても,抜本的解決に向けて準備をしているところである.
 一方,地方税である事業税は,社会保険診療について,ごく積極的に非課税となっている.社会保険診療を非課税としてきた大きな根拠は,公益性の高い事業ということが挙げられるが,教育をはじめ,他の公共的事業においても徐々に課税されてきた経緯があり,ここ十年以上,総務省や政府税制調査会では徹底的に槍玉に上げられてきている.万が一,この事業税が課税されると,診療所(個人)であっても,平均百万円以上の増税になることが予想される.
 そもそも事業税は,その事業を行うに当たって行政サービス(清掃,水道,道路整備等)を受けていることに対して納める税である.したがって,社会保険診療そのものが公益性があるということだけではなく,日医会員が,多数の行政が行う公共的行政サービスやその他事業に低廉な対価で参加していることが重要と考えられる.
 ある地域の医師会が,いったいどのくらい,行政の事業に参加しているかを調べてみたら,学校医や予防注射のほか六十以上にわたる事業,委員会に参加していた.しかし,すべての日医会員が医師会の諸事業,ことに行政から委託された事業や,行政の各種事業,委員会等に参加しているわけではないように思われる.
 会員諸氏一人ひとりが,今一度医師会事業を考え,医師会活動,行政の諸事業への貢献を行っていくことが,自らの医療機関の経営に大きく影響することを考えていただきたい.

日医ニュース - 2007年1月4日